皆さんには、つい食べ過ぎてしまう食べ物はあるでしょうか。
ポテトチップスを開けると一袋食べ切ってしまう。
唐揚げを食べ始めると箸が止まらない。
ラーメンを食べた翌日なのに、また食べたくなる。
こうした経験を私たちは「やみつき」と表現します。
最近発表された「食におけるやみつきの特徴」という研究では、一般の人を対象にアンケート調査を行い、「やみつき」と感じる食品や、その感覚について分析しています。
その結果、やみつき食品として多く挙げられたのは、
・ポテトチップス
・唐揚げ
・ラーメン
・寿司
・焼肉
・チョコレート
などでした。
そして、「やみつき」とは
・美味しい
・好き
・飽きない
・毎日でも食べたい
・手が止まらない
・箸が止まらない
といった感覚として表現されていました。
一見すると「味」がやみつきの原因のように思えます。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
共通しているのは「食感」
やみつき食品を改めて眺めてみると、興味深い共通点があります。
ポテトチップスはパリパリ。
唐揚げはカリッ。
フライドポテトはホクホクとサクサク。
かっぱえびせんは軽快な歯ごたえ。
どれも強い食感を持っています。
以前のブログでも紹介しましたが、モナカアイスの研究では、モナカの皮の「パリパリ感」が快感情を高め、脳活動にも影響を与えることが報告されています。
つまり私たちは、味だけを楽しんでいるわけではありません。
「咬んだ時の感覚」
「咬んだ時の音」
「口の中で砕ける感触」
こうした情報も含めて美味しさを感じているのです。
脳は食感にも反応している
食べ物を咬むと、歯や歯根膜、顎の筋肉、顎関節などから大量の感覚情報が脳へ送られます。
さらに、
・パリパリ
・サクサク
・カリカリ
といった咀嚼音は耳からも入力されます。
脳はこれらの情報を統合して「快い体験」として認識します。
実際に脳科学の研究では、糖質や脂質の摂取によって脳内の報酬系が刺激され、ドーパミンが放出されることが知られています。
今回の論文でも、
「止まらない」
「何度も食べたくなる」
「無性に食べたくなる」
という感覚は、こうした報酬系の働きと関係している可能性があると考察されています。
つまり、やみつきとは単なる味覚の問題ではなく、脳が感じる快感の問題とも言えるのです。
咀嚼音はASMRに近い?
先日のブログでも取り上げましたが、近年、「ASMR」という言葉を耳にする機会が増えました。
心地よい音を聞くことでリラックスしたり、快感を得たりする現象です。
実は咀嚼音もこれに近い側面があります。
ポテトチップスを咬んだ時のパリッという音。
唐揚げの衣が砕ける音。
モナカの皮が割れる音。
これらは単なる食事中の音ではなく、脳に対する刺激でもあります。
味覚だけでは説明できない「また食べたくなる感覚」の一部は、この咀嚼音によって生み出されている可能性があります。
よく咬むことは脳への刺激でもある
私たちは普段、「咬むこと」を栄養を取り込むための作業と考えがちです。
しかし咀嚼には、
・脳への感覚入力
・報酬系の活性化
・前頭前野の活性化
・ストレス緩和
・セロトニン神経の活性化
など、多くの役割があります。
食べる楽しさは、味だけで決まるものではありません。
歯ごたえ、咀嚼音、口の中での感触、そして脳が感じる快感。
こうした要素が重なり合って、「やみつき」という感覚が生まれているのです。
おわりに
今回の研究から見えてきたのは、「やみつき」は単なる味覚では説明できないということです。
人は味だけで食べているのではありません。
咬むことで生まれる感覚や音、それによって活性化される脳の働きまで含めて「美味しい」と感じています。
もしかすると、
「やみつきになる味」
というより、
「やみつきになる咀嚼体験」
と言った方が正しいのかもしれません。
毎日の食事の中で、ぜひ一口ごとの食感や咀嚼音にも意識を向けてみてください。
そこには、脳が喜ぶ理由が隠れているかもしれません。
※参考文献 : 鈴木大介ら『食におけるやみつきの特徴』(日本感性工学会論文誌, 2026)
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