前回のブログでは、歯の型取りの際に「頭を後ろへ反らせないこと」が大切だとお伝えしました。
その理由は、頭を後屈させることで、
- 型取りの材料(印象材)が喉へ流れやすくなる
- 深い呼吸がしにくくなる
といった状態が起こりやすくなるためです。
その結果、型取りが苦しくなり、嘔吐反射(オエッとなる反応)が出やすくなってしまいます。
しかし実際の診療では、型取りに限らず、歯科治療中に口を開ける際、デンタルチェアで横になっていても頭を後ろへ反らせながら開口する人は少なくありません。
では、なぜこのような動きが起こるのでしょうか。
そして、その動きにはどのような問題が隠れているのでしょうか。
今回は、「口を開ける時に頭が反る理由」について、筋肉や姿勢との関係から考えてみたいと思います。
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「顎だけ」で開けていない可能性
口を大きく開ける時に、頭が後ろへ反る人は、下顎だけで開口できず、首や頭の筋肉を代償的に使っている可能性があります。
本来、口を開ける動きは、下顎がスムーズに下がることで行われます。
ところが、その働きがうまくいかない場合、身体は別の筋肉を使って「開けやすく」しようとします。
つまり、
「顎を開けている」のではなく、
「首や頭を使って口を開けている」
状態になっていることがあるのです。
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開口時に関与しやすい筋肉
① 胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)
首を回したり傾けたりする代表的な筋肉です。
この筋肉は、固定のされ方によっては頭を後方へ引く働きにも関与します。
開口時に胸鎖乳突筋が過剰に働くと、
- 顎だけで開けられない
- 首ごと後ろへ引いて開ける
- 顎を前に突き出すような開け方になる
といった特徴がみられます。
② 後頭下筋群(こうとうかきんぐん)
頭を後ろへ反らす深層筋です。
開口時に頭が後屈する人では、この筋群で頭を安定させながら口を開けているケースがあります。
特に、
- 舌骨周囲筋が弱い
- 深頸屈筋がうまく使えない
- 顎関節の動きが悪い
場合に、代償として働きやすくなります。
③ 僧帽筋上部線維
いわゆる「肩こり」で有名な筋肉ですが、頭頸部を後方から支える役割もあります。
この筋肉が優位になると、
- 肩をすくめながら口を開ける
- 首全体が緊張する
- 顎より先に首が動く
といった動きがみられることがあります。
本来の開口動作では、
- 外側翼突筋
- 顎二腹筋
- 舌骨上筋群
などが協調して働きます。
その中でも特に重要なのが、「舌骨上筋群」です。
この筋群は、下顎を下げるだけでなく、嚥下や呼吸、舌の機能とも深く関わっています。
もしこの筋群がうまく働かないと、下顎だけで口を開けることが難しくなり、頭を後ろへ反らせることで代償するようになります。
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なぜ頭を反らせると開けやすいのか?
実は、この動き自体は身体にとって“合理的な代償”でもあります。
頭を後屈させることで、
- 舌骨が引き上がりやすくなる
- 気道を広げやすくなる
- 顎を下げやすくなる
- 口腔底の緊張を逃がしやすくなる
ため、「口が開けやすい状態」を作れるのです。
つまり身体は、
「顎だけでは開けにくいから、首や頭も使って開けよう」
としているとも言えます。
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背景に隠れていること
このような開口パターンは、単なる「クセ」ではなく、以下のような問題と関連していることがあります。
- 猫背
- 頭部前方位姿勢
- 口呼吸
- 舌圧低下
- 顎関節の可動制限
- 咀嚼筋の過緊張
- 舌骨周囲筋の弱化
- 深頸屈筋の機能低下
特に、
- 開口時に先に首が動く
- 頭が反る
- 肩が上がる
といった動きがみられる場合は、単純な顎の問題だけでなく、姿勢・呼吸・舌機能まで含めて評価する必要がある場合があります。
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「どれだけ開くか」より「どう開くか」
歯科治療では、「口が何センチ開くか」に注目されがちです。
しかし、特に訪問歯科や摂食嚥下の現場では、
「どれだけ開くか」だけではなく、
「どう開いているか」
を見ることが非常に重要です。
口を開けるという動作ひとつにも、呼吸、姿勢、舌、首、顎関節など、全身の機能が関わっています。
もし「口を開けると首がつらい」「歯科治療で苦しくなりやすい」「開ける時に頭が反る」といったことがあれば、それは身体からのサインかもしれません。
何気なく口を開けるといったことも、気にかけてみるきっかけになれば幸いです。
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