今回は、「しっかり咬まないこと」によって起こる舌の筋肉の衰えについて考えてみましょう。
近年、この問題は高齢者だけでなく、若い世代にも広がっています。その背景には、食事での咀嚼回数の減少に加え、コミュニケーション手段の変化があります。文字でのやり取りが増えたことで、実際に会話をする機会が減り、舌を動かす機会そのものが少なくなっているのです。
舌は単なる器官ではなく、筋肉のかたまりです。四方八方に筋繊維が走り、非常に複雑で繊細な動きを可能にしています。だからこそ、使わなければ衰えますし、十分に使われないまま育つ子どもでは、発達そのものが不十分になる可能性があります。
いわゆる「ポカン口」と呼ばれる、口が常に開いている状態の子どもが増えているのも、こうした舌の機能低下と関係していると考えられます。体の成長を気にかけるのと同じように、舌の成長にも目を向けることが、子育てにおいて重要です。
舌の筋力が低下し、舌が本来あるべき位置よりも低くなる「低位舌」の状態になると、さまざまな影響が現れます。滑舌が悪くなるだけでなく、口呼吸になりやすくなります。口呼吸では鼻の粘膜というフィルターを通さずに空気が体内に入るため、免疫力の低下や感染症へのかかりやすさにつながります。また、口の中が乾燥しやすくなり、むし歯や歯周病のリスクも高まります。
さらに、舌から歯への内側からの圧力が弱くなることで歯並びが乱れやすくなり、上顎を適切に支えられないことで姿勢の悪化にもつながるなど、影響は口の中にとどまりません。
加えて、近年の研究では、舌の筋力や持久力の低下が低栄養のリスクを高めることも報告されています。舌の機能が低下すると、食べる力や飲み込む力が弱くなり、結果として十分な栄養摂取が難しくなるためです。
そしてこれは特別なことではなく、全身の筋肉と同じように、舌の筋肉も何もしなければ30代をピークに徐々に衰えていきます。
だからこそ大切なのは、「舌をしっかり使う生活」を意識することです。よく咬んで食べる、しっかり会話をする――そうした日常の積み重ねが、舌の機能を守ります。
子どもはもちろんのこと、舌を使う機会が減っている現代の大人たちも、日々の生活の中で意識していきたいポイントです。



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